親が高齢になれば離れて暮らしていると心配になります。そうかといって、同居は難しい場合、施設への入居を考えるケースは多いものです。有料老人ホーム、老健、特別養護老人ホーム、高齢者サービス付き住宅など施設にはさまざまな種類があり、適したところに入居しないと精神的にも苦痛を味わうことになります。
ここでは、老人ホームと老健を取り上げ、2つの違いを見ていきましょう。施設の選び方についてもお伝えします。
公的な施設である老健
老健(老人保健施設)と老人ホームの違いの一つが、老健は公的な施設であることです。医療法人や地方公共団体などが運営している老健は、民間が運営している施設よりも費用が安いのがメリットです。入居一時金がなく、月額利用料のみの支払いですむので、介護度や、また個室、多床室など部屋タイプにもよりますが、1ヵ月10~30万円程度です。
さらに、介護保険が適用されるので、施設サービス費用も1~2割負担で済みます。
費用が安くても、リハビリや医療が充実しているため、人気があります。ただし、長期的な利用はできないので注意が必要です。老健は在宅・自立復帰を目指すための施設になります。病院での治療後、施設でのリハビリが必要な人が在宅で生活できるようにケアをすることが目的です。
そのため、3ヵ月ごとに入所継続の判定が実施され、家庭での生活が可能と判定された場合は退所しなければなりません。入所可能期間は長くても1年程度のところが多いようです。
さらに、入居条件は原則65歳以上で、要介護1以上の介護認定をされていることです。その他にも、病状が安定しており、感染症などの疾患がないか、入院治療の必要がないかなどを確認した上で入所できるかどうかが判断されます。
費用が安いだけではない!老健のメリット
老健施設のメリットは費用が安いだけではありません。メリットの一つには充実したリハビリケアが受けられることがあります。個別のケアプランが作成され、作業療法士や理学療法士などのリハビリ専門スタッフがリハビリを実施します。
在宅で不自由しないためのケアをはじめ、車イスや歩行器の練習なども行います。また、緊急で医療が必要なときは、医師による適切な治療を受けられます。老健では、医師や看護師が必ず常勤しているので安心です。リハビリケアを専門のスタッフによって指導をしてもらうことで、自宅に戻った際、本人も家族も楽になるでしょう。
短期間の入所になる老健ですが、それを有用する方法もあります。例えば、長期利用が可能な施設を探すまでの一時的な入所、バリアフリーなど自宅をリフォームする間の居住場所、などといった場合に利用するのも一つの方法です。
民間施設である有料老人ホーム
老人ホームは民間が運営している施設で、タイプもさまざまあり、長期利用も可能です。有料老人ホームは費用が高い、というイメージがあると思いますが、施設によって費用は異なります。老人ホームには、住宅型のものもあれば、介護付老人ホーム、自立して生活ができる人が入所できる老人ホームなど種類があり、サービス内容や地域などによって費用はさまざまです。
費用の目安としては20~30万円程度で、サービスや施設の充実度によってはそれ以上の費用がかかります。また、有料老人ホームはさまざまな企業が経営していることも少なくありません。高齢者の増加に伴い、需要が増えているためビジネスとして参入する企業が増えているのです。
そのため、倒産する企業も増えているのが現状です。ノウハウがないから倒産しやすい、とも言えず、異業種から参入した企業が成功している例もあります。なお、老人ホームを選ぶ際には、人気はどうか、部屋の空き具合はどうか、サービスの質や時代に合わせた施設づくりをしているか、などを確認することが必要です。
サービス内容が充実!幅広く選べる老人ホーム
費用が安く、医療やリハビリが充実している老健は人気があり、また老人ホームに比べて施設数が少ないことから、入所待ちをすることもあります。一方、老人ホームは施設数も多いこともあり、よほどの人気施設でなければ入所待ちはしなくてすむでしょう。
在宅復帰が目的である老健施設にはレクリエーションや娯楽施設はほとんどありませんが、老人ホームはそういったサービスが充実している施設が多いです。例えば、レストランのような華やかな食事が提供されたり、スポーツジムやカラオケなどの娯楽施設があったり、さまざまなレクリエーションが実施されていたりします。
医療や介護のほか、生活の楽しみを踏まえて選べるのが、老人ホームのメリットと言えます。
多様化する高齢者のための施設や住宅。高齢者の住居の選び方のポイント
健康で自分の身の廻りのことができる高齢者もいれば、要介護度が高く介護付きでなければならない高齢者もいます。現在では増加する高齢者のさまざまな要望や介護・医療の必要度に応じた施設や住宅も増えています。そういった中で適切な施設・住宅を選ぶ際に必ずおさえておきたいのが介護と医療の依存度です。
先に述べた老健では原則要介護1以上が条件ですが、特別養護老人ホームは要介護3以上です。施設によって基準が異なるので確認しましょう。さらに、インスリン注射が必要な場合は医療行為ができるスタッフが常駐していることが必要です。
このような医療的な処置の有無のほか、施設で行われるサービス内容もしっかりチェックすることが大切です。食事内容や時間、入浴回数、個室の広さ、騒音、面会時間など暮らしやすさについても確認しましょう。また、娯楽施設やレクリエーションなどの楽しみがあるかどうかも確認する必要があります。
ただし、レクリエーションなどは強制ではなく、本人の意思を尊重してくれることも大切です。また、24時間の看護をしてくれている、医療機関が隣接しているなど、医療体制もおさえておきたい点です。
体調を崩したときのケアや緊急な治療が必要になった際はどういった体制で治療が実施されるのか、といった点を確認しておきましょう。施設にしても住宅にしても、実際に見て決めることが重要です。入居している人たちがどのような人たちか、雰囲気はどうか、スタッフは笑顔で働いているか、といったことを確認するとともに、駅から近いなど立地に関してもチェックしましょう。
もし、すでに施設や住宅に居住することを決めているなら、本人が自分の目で確認し決めるのが理想的です。いくら家族が気に入っても、実際にそこに住む人の意見が一番大切です。できれば健康なうちに、本人が施設や住居選びをすることをおすすめします。
迷ったり悩んだりした際には、ケアマネージャーや地域包括支援センターなどの機関に相談するといいでしょう。さまざまな情報があり、入居条件や費用、介護保険制度などについて熟知している専門スタッフがいるので、より適した住まいを見つけられる可能性があります。